ツルとかヘビとかキツネとか、人間以外のものと結婚する話は日本にも世界にも多い。第154回芥川賞を受賞した表題作のタイトル「異類婚姻譚」とは、そうした話を総称する言葉だ。だが主人公の女性「サンちゃん」が何と結婚していたのかはよく分からない。 サンちゃんの旦那はサラリーマンだが、若くして高級マンション住まい。親の七光かと思いきや、血族は一切出てこない。どれだけ高給なのか。確かにどこか人間離れしている。サンちゃんはその怪しさに気付かず、「極楽」の主婦生活を送る。子供もおらず、あまりに楽すぎて後ろめたくなるような生活だ。「鶴の恩返し」のように、異類との結婚は富をもたらす。だが富には条件がある。 鶴女房が「機を織っている姿を見ないで」と言うように、旦那も家では真面目な話は一切したくないと宣言する。その条件を守る限り、幸せは守られるだろう。 だが、サンちゃんは現代女性なので、そんな生活には不安を抱く。