いま職場では、うつ病などメンタルヘルスの問題が深刻化している。仕事や人間関係で追い詰められ、働けなくなったり命を絶ったりする人が増えている。だが心の病は、身体の病気に比べてその実態がわかりにくく、患者と健常者の間には「見えないカーテン」が存在する。これまでタブーとされてきた精神科の内側の世界。そこにカメラを入れ、モザイクなしで人々の表情を撮ったドキュメンタリー映画『精神』が2009年6月13日から公開される。現代人の精神のありように真正面から迫った想田和弘(そうだ・かずひろ)監督にインタビューした。 >>「心の病になったからこそ人生が豊かに」 想田和弘監督インタビュー(下) 大学生のとき、精神科に駆け込んだ ニューヨークを拠点に映像制作を行っている想田和弘監督。前作のドキュメンタリー映画『選挙』では、日本の地方選挙の舞台裏を生々しく描き出し、海外で高い評価を受けた ――映画のテーマとして「
「カメラ回すのやめろっていってんだ! やめろって!」──テレビ局内の報道フロアに怒号が響く。地方局の東海テレビが「開局60周年記念」と銘打って制作したドキュメンタリー番組が、テレビ界を騒然とさせている。 『さよならテレビ』と題された90分番組は、9月2日に東海エリアでローカル放送された。ディレクターとして制作を取り仕切ったのは東海テレビの土方宏史(ひじかた・こうじ)氏。同氏は指定暴力団の構成員たちに密着し、その現実を克明に描いたドキュメンタリー『ヤクザと憲法』(2015年に東海テレビで放送後、映画化)を手がけたことで、脚光を浴びた人物である。 『さよならテレビ』は、土方氏が2016年11月から今年6月にかけて、自身の所属する「東海テレビ報道部」を取材対象にした番組だ。土方氏は企画意図をこう語る。 「メディアをドキュメンタリーの取材対象にしたいと考えている同業者はいるかもしれませんが、自分た
暴力団の組の内部をカメラで撮影して映画にした人物は東海テレビ報道部の社員で土方宏史(ひじかた・こうじ)さんという。 正真正銘のヤクザの組事務所の内部にカメラを入れて、警察による家宅捜索まで組事務所の内側から撮影し、世間の話題になった衝撃作を制作した人物である。暴力団員が麻薬の密売にかかわっているような場面、野球の賭博にかかわっているような場面など、きわどい場面が次々に出てくるドキュメンタリーだった。 「ヤクザと憲法」は、まるで最初から映画を想定していたかのように、通常のテレビドキュメンタリーにありがちなナレーションを排除して「ノーナレーション」つまり「ノーナレ」の手法で描かれている。テレビのドキュメンタリーは、通常はナレーションで様々な情報について説明している。それをまったく使わないという手法は工夫がいるのでかなり高度に熟練した制作手法といえる。
映画『ヤクザと憲法』公式サイトより 今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。 ■『ヤクザと憲法』出演の若頭が逮捕 10月2日、大ヒットドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』(2016年、東海テレビ製作)に出演していた暴力団の若頭が建設会社関係者を脅したとして逮捕されました。建設資金の支払いを逃れようと関係者を10人ほどで取り囲み、「カネカネ言いやがって」と怒鳴ったそうで、録音された音声もニュースで公開されていました。 『ヤクザと憲法』は、「1万人動員で大ヒット」といわれるドキュメンタリー映画にあって、4万人以上を動員したそうで、今でも人気がありますね。若頭は特に「コワモテ感満載」だったので、ご覧になった方は印象に残ったと思います。話題の映画だっただけに、逮捕のニュースもネットでもけっこう取り上げられてました。ネットに「やっぱり……」的な
本稿を書くきっかけとなったのはある飲み会だった。 私は仕事仲間の映像プロデューサーと、在京キー局の社員である20年来の友人と3人で飲んでいた。仕事柄3人ともドキュメンタリーが好きで、最近観たドキュメンタリー番組や映画の話で盛り上がった。最初は楽しく飲んでいたのだが、不穏な空気が流れだしたのは、東海テレビが制作した「さよならテレビ」の話題になってからだった。 「あの番組はありえない」「放送したことには大きな意味がある」 キー局の社員が、「あの番組はありえない」と批判を始めた。それもかなり強い口調で、全否定と言ってもいい論調だった。彼は話しだしたら番組を思い出して「また怒りが沸いてきた」とまで言い出した。私が「あの番組はすごい作品だった。放送したことには大きな意味がある」と反論すると、火に油を注いだようで、さらに強い言葉で言い返してきた。私も腹が立ち、冷静な議論ではなく、口ゲンカのような状態に
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でマイケル・ムーア監督の最新作『華氏119』を紹介していました。 (町山智浩)でね、実はちょっと今日、来る時に遅れちゃいまして。さっき来たんですけども。友達が足を切断することになって。もう切断はしたんですよ。で、リハビリの病院に行ってきたんですよ。東京の鐘ヶ淵の方にある東京リハビリテーション病院に行ってきたんですけど。男色ディーノさんのプロレス仲間の吉田武くんという方が、いま48ぐらいなんですけども。ちょっと糖尿病と関連する腎不全で。それで足の昔の交通事故の傷が壊死して。気がついた時にはもうダメで切断っていう感じになっちゃったんですよ。 (赤江珠緒)はー! (町山智浩)で、吉田武くんって結構テレビに出ている人でね、TVチャンピオンっていう番組があったじゃないですか。あれに2回ぐらい、ゲーム王で出て決勝まで進出しているような。 (赤江珠緒)じゃあゲ
日本で一番有名なニートことid:phaさんを中心に運営している「ギークハウス」が、テレビ番組「ザ・ノンフィクション」に取り上げられた。 「ザ・ノンフィクション後編は25日放映です」 http://pha.hateblo.jp/archive/2017/06/24 ギークハウスは、30代前後の人たちが共同生活を行うシェハウスだ。「働かない/働けない」人たちが集まって暮らしている。主な運営資金はカンパや就労している人たちの出資で賄っている。プログラマなどのIT関係者の溜まり場というイメージも強かった。社会の「常識」や「ルール」に馴染めなかったり、精神疾患・障害を持っていたり、失職を繰り返したりしている人たちが共同生活をしている。同時に抜きん出た「個性」と「才能」を持つ人が数多く集まる場所にもなってきた。 このギークハウスを取り上げた番組の中で私が引き込まれたのは、phaさんの「一人だけ生き残っ
今月17日にロンドンで開かれた国際映画祭の長編ドキュメンタリー部門で、『ビハインド・ザ・コーヴ~捕鯨問題の謎に迫る~Behind “THE COVE“』(現在、189カ国でネット配信中)の八木景子監督が最優秀監督賞を受賞した。 八木監督が同作を製作する発端となったのが、タイトルの通り、映画『ザ・コーヴ(THE COVE)』(2009年、ルイ・シホヨス監督、米)をめぐる問題だ。立ち入り禁止区域に侵入し、イルカの捕殺場面を隠し撮りするなどして残酷性を強調、和歌山県太地町伝統のイルカの追い込み漁を批判的に描いた作品だったが、アカデミー賞・長編ドキュメンタリー賞を受賞した。その後、日本の捕鯨やイルカ漁に対する国際世論の厳しい見方が広がり、太地町の人々に世界中から“野蛮・虐殺者・変態民族“などの心無い言葉を浴びせられた。 しわ寄せは近隣の町にまで及んだ。去年10月、同じ和歌山県の白浜町にあるテーマパ
大島 アメリカのデヴィッド・ゲルブ監督の『二郎は鮨の夢を見る』というドキュメンタリー映画があるんです。これを観たときに単純に悔しいって思ったんですよ。日本人の手で日本の食文化をきちんと撮ってみたいって。 土方 ラーメンは日本の食文化を言い尽くしていますもんね。 大島 でもラーメンですからね、もう、何の問題提起もない作品です(笑)。「沖縄で起きていることに比べたらラーメンなんて」って、思う人はたくさんいると思います。 『ラーメンヘッズ』 「とみ田」店主・富田治氏 ©ネツゲン 佐々木 いや、あえてラーメンをドキュメンタリー作品にすることが重要なんですよ! そこから「日本人とは?」という問題提起も立ち上がるわけですし。「ドキュメンタリーだから大切なことを扱っているので、多少つまんなくても、テンポが悪くても、大事な問題だから我慢して見ましょう」というのは不健全。「面白い」と「ドキュメンタリー」は十
ここ数年、テレビ局が制作したドキュメンタリー映画に注目が集まっている。その火付け役になったのが、動員22万人を記録し、現在も上映中の『人生フルーツ』。同作のほか数々の作品を手がけてきた東海テレビの阿武野勝彦氏に、ローカル局のドキュメンタリー制作の現状について聞いた。 労力と予算ばかりかかって視聴率が取れない金食い虫 阿武野勝彦氏/東海テレビ放送 報道局 プロデューサー テレビドキュメンタリーに携わっていた阿武野氏が、映画館でドキュメンタリーを上映したいと考え始めたのは今から10年ほど前だった。 「それまでは、大切な表現を切り捨てるばかりの今のテレビに、飲み屋でダメ出しをするだけだったのですが、自分が50歳になろうというとき、好きで入ったテレビに何か恩返ししないと後悔すると思ったんです」 そこで浮かんだのが、地上波で全国ネットが難しいなら、映画という形でアウトプットして、広く世の中に発信する
『ゆきゆきて、神軍』『全身小説家』などのセンセーショナルなドキュメンタリー作品で知られる映画監督、原一男。世界に衝撃を与えた『ゆきゆきて、神軍』から31年、待望の最新作が今年3月10日より全国順次公開される。 大阪・泉南地域の石綿(アスベスト)工場の元労働者とその親族が、アスベストの人体への危険性を知りながらその規制を怠ったとして国の責任を問う、裁判闘争の全てを記録したドキュメンタリー映画『ニッポン国VS泉南石綿村』。 今回は本作への思いや制作過程での苦悩を原監督自身に語ってもらった。 ――昨年10月の釜山国際映画祭では最優秀ドキュメンタリー賞の受賞、おめでとうございます。すでに国内でもいくつかの劇場で先行上映されていますが、反響はどうですか? 原一男(以下、原):今のところ、私が懸念していた以上に好意的に観てもらえているようで、正直ホッとしています。日本人の特性なのかもしれませんが、ネッ
ペンは人を傷つけるという覚悟があるか? 元・読売の清武さんが語る記者論と組織論読売新聞時代の元上司でノンフィクション作家、清武英利さんへのインタビュー【後編】では、言葉が持つ力について聞いた。 思えば、読売新聞時代の恩師で今はノンフィクション作家の清武英利さん(67)はどんな時も、取材して原稿を書いていた。 指導を受けた名古屋市の中部本社(現・東京本社中部支社)の社会部長時代も、読売巨人軍代表の時も連載を持ち、何冊も本を出版している。普通、社会部長や球団代表になれば、自分で記事を書くことはなくなるだろう。 十年ほど前、巨人軍の代表室を訪ねた時、「今、こんな取材をしているんだ」と言って、次に書く記事のために、清武さんが訪ねた地を撮った写真を見せてくれたことがある。 「目に見えるように描写するために、ディテイルを記録しておくんだよ」と言うのを聞き、「ああ、この人はどこに行っても記者なんだ」と思
こうしたドキュメンタリー番組を作り続ける佐々木健一とは一体、何者なのか? ◆ 忘れられない北海道ローカルバラエティ『モザイクな夜』 ―― 自在なテーマに取り組むドキュメンタリストである佐々木さんの「テレビの履歴書」をお伺いしていきたいと思うのですが、そもそもテレビの世界に入られたきっかけは何だったんですか? 佐々木 (照れながら)まず、「ドキュメンタリスト」なんて言われると「誰のこと?」って思っちゃうんですけど……。僕は幼い頃テレビっ子で、バラエティ番組が大好きだったんです。『オレたちひょうきん族』とか、『とんねるずのみなさんのおかげです』とかすごく好きでしたし、『元気が出るテレビ』もメチャメチャ好きでした。生まれが北海道なので『どさんこワイド』もよく見てましたね。あと、メジャーになる前の大泉洋さんも出ていた『モザイクな夜』っていうローカル深夜番組。オープニングからモザイク映像が流れるとい
【Book Review】制作と批評が織りなすドキュメンタリーの公共性——金子遊『ドキュメンタリー映画術』text 中根若恵 « Previous 世界との回路としてのドキュメンタリー 昨今のドキュメンタリー映画界が見せる活況についてはことさら論じるまでもない。世界中で多くのドキュメンタリーが生み出され、劇場や映画祭でそれらを目にする機会も増えた。個々の作品に目を向けてみれば、つくり手が対象と距離をとる観察的なドキュメンタリーや、逆に制作者が対象に介入していく作品、そしてときには虚構と現実の境界を曖昧にした表現など、その幅の広さにも目を見張らされる。 量的・質的にかつてない高まりを見せるドキュメンタリーは、カメラによって切り取られ、編集によって再構築された「現実」を提示する。そこで私たちが目にするのは、大自然の驚異や異国の紛争、そしてときにはある家族の過ごす親密な空間など、この世界のどこか
鈴木おさむ/放送作家。1972年生まれ。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。多数の人気バラエティーの構成を手掛けるほか、映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍 松永太死刑囚(c)朝日新聞社 放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「変わる人と絶対に変わらない人」をテーマに送る。 【写真】北九州連続監禁殺人事件の犯人・松永太死刑囚 * * * フジテレビで放送になったドキュメンタリー「ザ・ノンフィクション 人殺しの息子と呼ばれて…」が大きな話題となった。 2002年に発覚した北九州連続監禁殺人事件の犯人、松永太死刑囚と、内縁の妻である緒方純子受刑者の息子が、現在24歳で10時間に及ぶインタビューにこたえるというもの。 その事件の凄惨さを改めてここで書くことはしなく
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