十字軍は聖地エルサレム奪還を目指した東方遠征軍だけではない。南フランスの異端カタリ派・ワリドー派に対するアルビジョア十字軍、イベリア半島奪還戦争であるレコンキスタ運動、そして本書で描かれるプロイセン・ロシア・バルト海沿岸地域の異教徒に対する北方十字軍などがある。 本書は、その北の十字軍の主力となったドイツ騎士修道会の興亡を通して中世欧州世界の拡大の様子と北方十字軍を正当化する論理としてのキリスト教聖戦・正戦論の理論的展開の過程を丁寧に描いた好著である。一九九八年度サントリー学芸賞思想・歴史部門受賞。 人気ライトノベルシリーズ「狼と香辛料 (電撃文庫)」の著者支倉凍砂氏が同シリーズの執筆に際しての参考書籍の一覧が話題(参考1、参考2)になっていたが、その一つとして本書を挙げていた。支倉氏のコメント通り僕もとても面白い本だと思う。 十字軍とは何か、『経済的問題や政治的問題を踏まえつつも、異教徒