邪馬台国報道から考える埋蔵文化財の危機 菊池 徹夫/早稲田大学文学学術院教授 奈良・纒向遺跡における大型建物跡発見の歴史的意義 去る11月11日の主要各紙一面では、英国人女性の遺体遺棄容疑者の逮捕と森繁久弥氏死去の記事と並んで、奈良の纒向遺跡で3世紀前半の大型建物跡発見、という記事がせめぎ合っていた。これには別に詳しい解説記事もあって、ここが『魏志倭人伝』の伝える邪馬台国の中枢施設か、との趣旨だ。大ニュースの間でエジプト以外の考古ネタがこれだけ健闘するのは珍しいだろう。さすが、古代史ファンの多い卑弥呼の実力か、と思われた。 だが今回の発掘成果は、じつは邪馬台国が大和か九州かといったいわゆる所在地論争の問題だけではなく、日本史全体、いや現代社会に生きる我々すべてに関わる大事件といってもいいと思われる。各紙が競って大きく報道したのは、その意味からきわめて妥当だった。 過去の歴史が忘れられていく