中村橋之助が芝翫を襲名し、愛之助と海老蔵が五右衛門を競作、国立劇場では30年ぶりの『仮名手本忠臣蔵』の完全通し上演と、歌舞伎の秋は充実している。 久々の「忠臣蔵」完全上演 歌舞伎の名作中の名作として、どのガイドブックでも紹介されているのが、『仮名手本忠臣蔵』だ。長い作品なので、そう頻繁には上演されず、歌舞伎座でも3年から5年に一度。前回は2013年の12月だった。 それから3年が過ぎて、今年は国立劇場で開場50周年記念として『仮名手本忠臣蔵』が「全段完全通し上演」と銘打たれて10月、11月、12月に上演される。これは3ヵ月間、同じものを毎日上演するのではない。 「長い芝居」と書いたが、『仮名手本忠臣蔵』は全部で11段(「段」と呼ぶが、ようするに「全11話」ということ)あり、10月は序から4段まで、11月が5から7段、12月が8から11段と分けて上演される。3回行かなければ、全部見たことにな