マスメディアの報道の実務でもっとも頭を悩ませるものの一つに「実名で報じるか、匿名とするか」の問題があります。運用上のルールは「原則は実名、ケースバイケースで匿名も」ですが、とりわけ事件事故の報道では、きれいに切り分けることが難しいケースが日常的にあります。 現在わたしは職場では整理部門に身を置いており、取材・出稿部門が出稿する記事の最終チェックを担当しています。先日、刑事事件の裁判の判決で被告名を匿名で記載した記事が提稿されてきました。小学校の男性教諭が、教え子の女児に性的暴行を繰り返し加えていたとして起訴された事件です。判決は実刑。判決理由で裁判官は、犯行の悪質さ、卑劣さを極めて厳しい表現で批判しました。性的暴行の被害者を匿名で報じるのはほぼルール化しています。社会的な2次被害防止のためです。しかし事件事故の加害者が、犯行時少年であるとか、明らかに責任能力に疑問があるなどの理由ではなく、