本記事は、先日発売された『若者たちに「住まい」を!』の書評です。本書は、日本の住宅政策を考える上での論点を挙げ、展望を示してくれるものです。この間の金融危機にともなう「派遣切り」に対処するため、政府は緊急的に雇用促進住宅の活用政策を打ち出しましたが、この問題を考える上でも、非常に重要な指摘をしています。 これまで日本では、正社員として就職し、雇用と所得を安定させ、結婚して住まいを確保するというライフコースが標準的とされてきました。そのため、住宅政策も、公庫融資を経由して、中間層の住宅購入を支援するという持家取得の推進が中心であり、また、その持家取得も、多くは政府による住宅政策ではなく、企業の援助の下になされてきました。反対に、単身者や低所得者に対する政策支援は、微量または皆無でした。 このような住宅政策の未整備は、先進国においては非常に特異な例であることを、本書は指摘しています。たとえば、