2011年12月05日01:39 カテゴリ本 吉田茂の呪い 沖縄をめぐる低次元の騒動は、日本の政治の劣化を見せつける。防衛相や局長の失言はいわずもがなだが、それを追及する野党も「沖縄の心を踏みにじるものだ」という類の感情論ばかりで、辺野古をやめたら基地をどうするのかという根本問題には触れようとしない。こうした歪みの根源には、本書もいうように吉田ドクトリンの矛盾がある。 吉田茂は、日本の官僚機構の傍流である外交官だったが、本流の政治家が公職追放されたため、消去法で首相になった。国内に基盤のない吉田は、対米追従によって権力を強化するしかなかった。GHQの押しつけた憲法も、彼にとっては早期に主権を回復するために受け入れるしかない「外交問題」だった。 新憲法は暫定的なもので、講和条約とともに改正する予定だった。吉田は晩年に「憲法第9条は間近な政治的効果に重きを置いたものだった」と語っている。平和憲