「空気と水はただ」というのが長年の日本人の一般的な考え方だった。経済的観点からも金銭で捉えにくい存在だったと言っていい。 もちろん、ミネラル・ウォーターも存在するし、上下水道代や水利権というものもある。空気だって排気ガス対策費用といった「コスト」に置き換えることはできたのだが、空気や水を商品として売買するというのは、これまで一般的ではなかった。 柴田明夫著『水戦争』は、そんな常識が一変しつつあることを明らかにしている。著者いわく「いまや世界の水資源はエネルギーや金属、食料にも増して資源化している」というのだ。さらに、そして「将来、原油のように取引所で取引される商品となる可能性も否定できない」とまで言い切っている。 著者の、この一見大胆とも思える直感は、おそらく正しいのではないだろうか。というのも、水に先んじて空気が取引の対象となっているからである。 欧州連合(EU)が二酸化炭素の排出権取引