根津朝彦(ねづ・ともひこ)立命館大学准教授 1977年生まれ。著書『戦後「中央公論」と「風流夢譚(むたん)」事件』など。 日本の報道機関は天皇や皇室への批判を自主規制しているのではないか――。そんな問いかけを含んだ著書『戦後日本ジャーナリズムの思想』(東京大学出版会)を、歴史研究者の根津朝彦・立命館大学准教授が発表した。ジャーナリズム史という視点の大事さを訴える一冊だ。 報道への統制や弾圧が目立った「戦前」や「占領期」ではなく、「戦後」のジャーナリストたちの言動と思想に光を当てた。共同通信の原寿雄(としお)や矢島翠(みどり)、大阪読売新聞の黒田清といった人々が紹介される。 「気骨のある記者たちがいたけれど研究対象にされることが少なかった。継承されるべき文化遺産があると訴えたかった」と根津さんは執筆動機を話す。 新聞記者などの「組織ジャーナリスト」に注目し、その人たちが組織・経営の論理とジャ