生物模倣、バイオミミクリーという用語がある。 これは端的にいってしまえばアリやハチが持っている、生物が進化の果てに築き上げた独自の機能を模倣し、技術として取り込もうという考え方のことである。本書では、そうしたバイオミミクリー(または、「生物に着想を得た」バイオインスパイアード)の事例──具体的には、イカにナマコ、ゴキブリにヤモリ、生態系そのものから着想を得て、迷彩スーツ、火星探査ローパーに装甲ロボット、持続可能都市と、ありとあらゆるものへ活かそうとする各種研究が紹介されていく。その道のりにはまだまだわからないこと、解決しなければならない問題が数多くあるが、世界を一変させる可能性を持っている。 効率は自然の多くの形態や機能を動かす強力な推進力であり、バイオインスピレーションによる技術開発でも高い価値のある長所となる。進化による際立った新基軸のいくつかは、進化が限られた資源を使ったり、厳しい環