本書は、第1章「ロシア宇宙主義」、第2章「アフロフューチャリズム、第3章「サイバースペース」と終章からなる。 3章のサイバースペースの議論は、私が3年前に書いた本『ポストヒューマン宣言』(小鳥遊書房)でうだうだと議論した論点を、すっきりスマートに整理されていて、その手際はさすがである。(脱帽している場合でもないか…)。私が「ポストヒューマンのパラドックス」や「ポストヒューマンの人間的葛藤」と呼んだものは、本書では〈不気味なもの〉や、単に〈もの〉と表現される。マトリックスより、ギブスンより、さかのぼって(東浩紀の議論を引き継ぎつつ)ディックにメタバース的可能性を読み込んだのは、興味深く読んだ。私も『SFマガジン』にディック論を寄せたことがあるが、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』をテクストに、しかし映画版『ブレードランナー』ではオミットされているガジェット=共感ボックスを重要なものとして