メイク・ビリーブだ! フィクションとは何か―ごっこ遊びと芸術― 作者:ケンダル・ウォルトン 名古屋大学出版会 Amazon 第8章のテーマは「描出体(depiction)」である。絵画を中心とした視覚的な表象体のことだが、しかし本書ならではの特徴づけで言語的な表象体との違いを探っている。 描出体とは 本書では水車小屋のある風景を描いた風景画が例として出てくる。この絵画を見るとき人は、水車小屋やその後ろにいる人などを見ているということも想像している。水車小屋の絵を見るとき、虚構的に水車小屋を見るということも成立しているのである。絵画作品、特に風景画は容易に反射的小道具となる。対して例えば小説内の風景描写は、その文章を読んで想像はしているが、その文章そのものが風景であるとはふつう考えない。 絵を見るという行為はいろいろな点で現実の物や景色を見ることと似ている。景色を見ながら何かを見つけるという