門脇俊介氏はハイデガー研究者であるが、本人も述べているように、ハイデガー哲学をアクチュアルなものとして分析哲学や認知科学との対話に多くの労力を費やしてきた異端のハイデガー哲学者である。その信念と研究活動はアメリカの哲学者ドレイファスやローティと多くを共有していてそれは本書を開いて最初のページに書かれている、 「ヒューバート・L・ドレイファス教授と亡きリチャード・ローティ教授に捧げる」 という言葉にも表れている。 ・ローティ、ドレイファス、ハイデガー アメリカの有力大学の哲学科ではデカルトやヒューム、カントは分析哲学の祖先だとみなされているのに、ハイデガーやフッサールはデリダと並んで「大陸哲学(continental philosophy)」として別扱いされている。そんなアメリカ哲学界でハイデガーの哲学の意味が少しでも認知されてきたのはドレイファスやローティに多くを負っている。 リチャード・