皆が納得する「解」を一緒に 桑子氏の専門は哲学。人間と自然の関係を哲学の側面から考察することが研究テーマで、1999年には著書「環境の哲学」を上梓した。この本が当時の建設省官僚の目に留まり、政策提言を求められたのが、公共事業と接するきっかけだった。 その後、2004年には国土交通省近畿地方整備局から、淀川水系の川上ダム建設に絡み、地元住民の意見調整で助言役を依頼される。相手は、ダム湖に水没する地域に住む人たち。本体工事の着工間際に、ダムの必要性について議論が始まった。 そこに加わった桑子氏がまず心を砕いたのは、行政と住民との信頼関係の構築。例えば対話の場は当初、まちなかのホテルだったが、ダムサイトの現場施設に移動。「議論の際、行政側担当者と住民とは隣り合って座る」、「住民の意見は一つひとつ、理由や背景、経緯を詳しく聞く」など、行政側の担当者にきめ細かな助言を与えて徹底してもらった。 この事