リーダーシップ論の第一人者コッターは、リーダーの条件として、賛同し後に続く「フォロワー」とのコミュニケーション能力の重要さを指摘しています。ここで言うコミュニケーション能力とはグループをまとめ、目標に到達するために、人を動かすための言葉を使う能力です。フォロワーに課題を認識してもらい、解決の最適法を共有し、進むべき指針を示すための説得術となります。 この基本戦略は、ギリシア時代にアリストテレスが、修辞学(レトリック)として体系化し、伝統的に西洋の大学の最も重要な科目として学ばれています。オックスフォードの学生も、哲学などの科目を通して、コミュニケーション戦略を身に付けます。 前提は、多読による根本概念の理解となります。これまでの英知を批判的にとらえ、独自の見解を持ち、権威者と討議を行います。そして最後に論文を執筆することにより自分独自の概念を身に付けるのです。論文とは、伝える内容に明確な根
ただ、こうした社会の「要請」は、それにうまく応えられない人に強い負荷を強いることになる。コミュニケーションがいまいちうまくいかないということ自体の問題ではない。むしろ「うまくいっていない自分を他者はどう思っているのかという再帰的な視点」(貴戸理恵『「コミュ障」の社会学』青土社、2018年、12頁)が、「コミュ障」(害)と呼ばれ、あるいは自分をそう感じる人の思考と振舞いを縛ることの方が重要である。 コミュニケーションは相互的なものであるので、「コミュ障」を特定の個人の「自己責任」にすることは、そもそもおかしい。 しかしここで注目したいのは、こうした「コミュ力」が求められる世界の政治的な帰結である。 「コミュ力」と称されるものの測定基準は、コミュニケーションの軋轢、行き違い、齟齬とそれが生み出す気まずい雰囲気を巧妙に避け、会話を円滑に回すことである。逆に、「コミュ障」と呼ばれる人がそう呼ばれる
第21回 残念なコミュニケーション・エラーを減らすために 2018/4/9 奥田弘美=精神科医(精神保健指定医)・産業医・作家 実はこうした状況は医療界でも同じで、指導医が若い研修医を指導する際や、医師が患者さんと接する際にも、ちょっとしたコミュニケーションの行き違いが重なってトラブルが発生しかけることがあります。 「若い人には、昔のように『見て覚えろ』『とにかくやれ』はもはや通用しない」「具体的に丁寧に、マニュアル仕立てにしないと動いてくれない」と言われて久しいですが、そうした問題に対処してきたはずの今でも、様々な現場でコミュニケーション・エラーが起き続けているのです。 かくいう私自身も過去には苦い失敗を少なからず経験しました。そのため、今はとにかくコミュニケーション・エラーを起こさないよう、できるだけの配慮とともにスキルと工夫を駆使しながら日々の診療や面談に臨んでいます。 そこで今回は
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界№1プレゼン術」がある。講演依頼などの連絡先はこちら。Voicyのチャンネル(声のブログ)はこちら。Twitter:Madoka Sawa (@madoka510) グローバル仕事人のコミュ力 澤円 グローバル化が進む現代において、ますます必須になるコミュニケーション力。グローバルに活躍できる人は、どう“コミュ力”を磨いているのでしょうか。マイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長として、エグゼクティブお向けに、さまざまなプレゼンテーションを行い、同社でトッププレゼンターの地位を確立している澤円さんが、そのスキル・知見を出し惜しみなく紹介します。 バックナンバー一覧 「働き方改革」には 三つの敵がいる
コミュニケーションについて書かれた記事に、2つ、個人的に面白かったものがある。 いずれも大変にバズった記事なので、覚えている方も多いだろう。 一つ目は、電通の人たちのカラオケが、恐ろしく洗練されており、「ただ行為のみ」に目的が置かれたコミュニケーションの極地を見た話。 電通の人たちとカラオケに行った話 電通の女性の1人は、AKB48の『大声ダイヤモンド』の「大好きだ! 君が 大好きだ!」の「君が」を「仕事」におきかえた替え歌を披露していた。照れの一切ない、一体こうなるまでに何度こなしてきたんだという洗練されたものだった。 普通なら振り付けをこなすだけでじゅうぶん盛り上げ役の責務を果たしたと考えてしまうところなのに。ハードワークなサラリーマンに広く刺さるよう、絶妙なモジリをほどこすなんて。 すげえという眼差しで傍観していたが、ほかの電通の人たちは彼女の完璧な振り付けや替え歌には反応を示さず、
「自分が正しい」にこだわりすぎない心の柔らかさを――『寛容力のコツ』の著者に聞く(第2回) 2017/7/21 柳本操=ライター 現場の人と話をする、というお話が出ましたが、やはり直接話をするほうが収穫は大きいのでしょうか。 下園さん 今、コミュニケーション能力の中でも「話を聞く技術」が明らかに低下していると感じます。ディスカッションすることよりも、文字やスタンプだけの簡単なやりとり、あるいは動画のやりとりでコミュニケーションする手軽さが受けている。でも、人間って、それだけでは不十分なのです。私も、メールのやりとりだけでカウンセリングすることは不可能ではないのですが、それをやらないのは、「目の前にいる人に向かって自分の考えを言葉にする」というプロセスの中で、人は自分の信じている価値観や本音を表すことができるのだと思っているからです。 相手の言葉に対してこちらが言葉を投げかけ、少しずつ気持ち
「自分が正しい」にこだわりすぎない心の柔らかさを――『寛容力のコツ』の著者に聞く(第2回) 2017/7/21 柳本操=ライター 怒りにとらわれることは人生の主導権を明け渡すこと 「被害者意識が強い人ほど怒りっぽい」という指摘も、意外でした。怒っている人は、むしろ、誰かに嫌な思いをさせるという点で、加害者なのでは、と思っていたのですが。 下園さん 身に覚えがありませんか。イライラしているときというのは、決まって、「なんで私だけがこんな目に遭わなくちゃいけないの?」「こんなに頑張っているのに!」「自分ばかりが損してない?」という思いが心に渦巻いています。これは、原始人的に考えるとご理解いただけるはずです。 原始人にとって、自分が頑張った労働への成果(食糧の分け前)が期待外れに少ないことや、自分だけが疲労してエネルギーがなくなること(戦闘力の低下)は憂うべきこと。なぜなら命の危機に直結するから
「生配信で月1000万円売り上げる子もいる」「ここは、努力が実る場所なんです」 アイドル戦国時代といわれる昨今、メジャーデビューを夢見るアイドル・タレントのタマゴたちは数多くいるが、全ての努力が実を結ぶわけではない。そんな彼女たちの多くが夢を実現する場として選んでいるのが、仮想ライブ空間「SHOWROOM」だ。 SHOWROOMは、DeNA発のプロアマ問わず誰でも生放送の配信や視聴ができるライブ動画サービスで、配信者と視聴者が双方向コミュニケーションを取れるのが特徴。配信者にアイテムを送れる「ギフティング」というシステムがあり、配信中に投げ込まれた無料・有料アイテムの総数に応じた報酬が配信者に支払われる。 自身のアバターが配信者を囲むように配置され、ライブ会場のような一体感を演出。有料アイテムを送るなど、能動的なアクションを続けることで、より目立つ前列にアバターを配置できる。実際に使ってみ
前回のJohn Jayとの対談から少し間隔が空きましたが、今回も懲りずに、勝手気ままな対談をお送りします。 お相手は、新潟に本社を置くアウトドアブランド、Snow Peakを“世界ブランド”に飛躍させるためにポートランドに拠点を移した、Snow Peak USAのGeneral Manager、坂東 佑治(ばんどう ゆうじ)さん。 いま最も勢いのある日本ブランドのひとつと言っても過言ではないSnow Peakのブランディングって、何か秘策があるの?と思ったのですが、返ってきた答えは至極真っ当な、地に足のついたアプローチでした。 Shinya Kamata (以後SK):ゆうじさんこんにちは。こないだはバッタリでしたね。(週末にレストランでブランチを食べたら、隣のテーブルがゆうじさん御一行だったという偶然が。) Yuji Bando (以後 YS):びっくりしましたね!ポートランドは狭いです
日本国内に約5000校あるとされている高校の3分の1を占める約1800校(中高一貫を含む)に導入されているデジタル学習ツールがある。ベネッセホールディングスとソフトバンクが2014年4月に設立した合弁会社Classiが運営する「Classi(クラッシー)」だ。なぜ、創業からわずか3年でこれだけ多くの学校に採用されたのか。同社代表取締役副社長の加藤理啓氏に理由を聞いた。 「3つの機能」で生徒ごとに最適な学習指導 Classiは、先生を介して生徒の学習を支援するアダプティブラーニングプラットフォーム。学校などの教育現場を60年近く支えてきたベネッセの学習支援ノウハウと、大手携帯キャリアであるソフトバンクの開発力が強みだ。生徒の自宅での学習記録やテスト結果などを一元管理・共有できるほか、生徒と先生間のコミュニケーション機能なども備える。先生は、授業後にオンラインで理解度の確認演習をし、そこから得
なぜオープンハウスの都心戸建て住宅は飛ぶように売れるのか?:ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(3/4 ページ) 先入観は捨てるべき 大薗: オープンハウスは土地の仕入れもユニークで、三角形の土地や線路沿いの土地など、値段が付きにくい土地も積極的に確保しています。さらに仕入れ営業については地域担当制ではないため、同じ不動産仲介業者に複数のオープンハウスの営業担当者が営業していることも少なくないといいます。この仕組みは当初から原型があったのか、企業の成長とともに仕組みを変えてきたのですか? 荒井: 仕組みそのものは変わっていません。用地を仕入れる際、同業他社は仲介業者の情報を貰って入札で買うのが一般的です。しかも多くはベテランの営業マンが担当しています。当社では学校を出たばかりの若手社員が担当していて、とにかく運動量豊富。顧客との接触時間が多い方が、売り上げ数字が伸びることは
会議というと、参加者のスケジュールを調整して会議招集のメールを出す、という企業が多いようですが、それだと時間も手間もかかります。でも、「今ちょっといい?」と言われれば、意外とすぐに集まってもらえるものなのです。 メールは持ち帰り文化、チャットはリアルタイム文化 こうして考えると、メールは意外と「面倒」を増やしているのです。 この違いは、メールとチャットの違いをイメージするとわかりやすいと思います。 メールはまず送り手が文章をまとめ、受け手がそれに返事をすることでやりとりが成り立ちます。 1往復するだけで1日、場合によっては数日待たなければいけません。 しかも、1回のやりとりだけで問題が解決しない場合、結論が出るまでに1週間以上かかることも珍しくありません。こうした、ひとりの人が数日かけて作業を終えてから次の人にバトンタッチし、次の人がまた数日かけて自分の分の作業を終えてから、さらに次の人に
夕方。舞子は課長の衣笠に会議室に呼ばれた。部課長会議が終わってからの、このタイミングの呼び出し。なんとなく嫌な予感がする。舞子はとぼとぼと衣笠の後を追う。 「あのね、並木さん。購買システムを、来年度からグループ子会社にも順次展開することになったよ…」 衣笠は毛むくじゃらの太い中指で、眼鏡のブリッジを何度か上げ下げした。たまにその仕草を見かける。言いにくい話を切り出す時の手癖のようだ。 「まだ安定運用できていないのに、い、いきなりグループ会社に展開ですか?」 舞子は思わず言葉を詰まらせる。 ――まだ1年、回してもいない(かつトラブルだらけの)未熟なシステムなのに、いきなり横展開しろだなんて…。まったくお上は何を考えているのだろう。冗談じゃない! …と、舞子は深呼吸して怒りの言葉を飲み込んだ。少し前までの舞子だったら、ここで目の前の衣笠にキンキンと盾突いたに違いない。しかし、そうしたところでど
認知症患者との対話法「バリデーション」、家庭でできる5つのテク 2016/9/28 伊藤左知子=医療ジャーナリスト 2016年9月8日の記事「暴言や徘徊がなくなる!?認知症患者を救う奇跡の対話法『バリデーション』」で紹介し、大きな反響を得た認知症の人との心の通うコミュニケーション法「バリデーション」。認知症が進んでも最後まで失われない機能「感情」に働きかけるとして注目されているこの対話法について、今回は家庭でも行えるテクニックを、関西福祉科学大学社会福祉学科教授の都村尚子さんへの取材を基に紹介する。 バリデーションは感情を表出させる対話法 介護する側はよかれと思って笑顔をキープすることが多いが、自分が悲しんでいるときに笑顔で話しかけられると、認知症の人は「こんなに悲しいのに笑っていて、この人は分かってくれない」と心を開いてくれない場合が多いという。(©PaylessImages 123-r
私がここ数年来様々な場所で感じているのは、その「意に添わぬ立場に置かれた」時に、多くの男がまるで機能しない人間になってしまうという、そのことだ。 この問題は、第一義的には、「礼儀」ないしは「対人コミュニケーション」の不具合として立ち現れる。 入院4日目の朝、私は自分のツイッターに 《人間の中味はともかく、こと対人マナーに限って言うなら、男の態度はトシを取れば取るだけ悪化する。失礼な若いヤツには滅多に会わないが、失礼なおっさんは珍しくない。爺さんになると失礼な人間の方が多数派になる。女性は年齢では変わらない印象がある。まあ、個人の感想だが。》 《年配の女性と年配の男性を比べると、救いようの無い人間は後者の集合により多く含まれている。 一応、個人の感想と言っておく。》 というツイートを書き込んだ。 念のために申し添えれば、これは、私が病院内で遭遇した特定の患者やその家族を想定して書いたコメント
認知症が進んだ人とでも、心の通ったコミュニケーションができる「バリデーション」という対話法が、今、注目を集めている。相手に共感することで、認知症の人の自尊心を回復させ、不安を軽減させるという。関西福祉科学大学社会福祉学科教授の都村尚子さんへの取材を基に、バリデーションとは何か、2回にわたり解説する。 バリデーションの基本は「正す」ではなく「認める」 認知症が進んで、自宅にいるのに「おうちに帰りたい」と言い出す母親。これに対し、家族や介護者がしてしまいがちな返答は「何言っているの? ここがお母さんのおうちでしょう」とか「帰るところなんてないでしょう」といった、正しいことを認めさせようとするもの。 「見当識(けんとうしき)といって日時や場所、周囲の人と自分との関係など現実を認識する力が衰えた母親に対し、『ここがお母さんの家で、帰るところなんてないでしょう』と正しいことを言って認めさせようしても
そのフレーズとは、次の通りです。 ●この目標は、会社の決定事項だ ●みんな、この目標でやっている ●私ではなく、上(人事)が決めた目標だ ●文句があるなら、上(人事)に言え ●できないならば、そう評価するしかない 演習で参加者がよく使う話法例ですので、実際のビジネスの場面でもこうしたフレーズに直面している人が多いのではないでしょうか。中には、「これらのことは、いずれも事実ではないか。なぜ、決して口に出してはいけないのか」と感じた人もいるでしょう。 確かに、目標の決定者は会社ですし、大多数の人はその目標に従って取り組んでいるかもしれません。最終的にその上司ではなく、さらに上位層や人事部が決めているし、「決定者に言ってくれ」と言いたくなる気持ちも分からなくはありません。できなければ評価が下がるということも、嘘ではありません。 だから、「このようなフレーズを出して何が悪いのだ」と疑問を持つ人もい
対策2:「正の注目」+「感謝の言葉」で勇気づけ 「同情」や「叱責」といった勇気くじきをなるべくやめる。それと同時にぜひ行っていただきたいのが積極的な勇気づけだ。勇気づけの第一の基本は「正の注目」と「感謝」である。「よくやった」「偉い」と上から目線でほめるのではなく、「一所懸命やっているね」「助かるよ、ありがとう」と横から目線で共感的に勇気づけるのだ。 アドラー心理学では、感謝の言葉「ありがとう」こそが最大の勇気づけであると考える。人は感謝されることで自分が他者に貢献していることを実感する。勇気の量とは、極言すれば、自分が他者に貢献できるという自信、すなわち貢献に関する自己信頼と言えるだろう。だからこそ、周囲の人、たとえばA子さんにアシストしてもらっている営業マンがことあるごとに彼女に「ありがとう。助かるよ」と伝えることはとても大きな勇気づけとなる。 また、その際に「正の注目」を加えると、よ
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