陰謀論の引き金は「不遇感」 人はどんなときに「アイロニカルな没入」に陥ってしまうのか。それは受け入れがたい不遇感を抱えていて、その原因がわからないときです。不幸には偶然によるものもあるし、因果関係はしばしば非常に複雑です。それでも、自分にあって然るべき幸福がない、不当に不幸だと感じたとき、人はどこかに原因を見出し、安心感を得ようとするのです。 こうして、人々の多様な不遇感を一手に引き受けるような「記号」が生まれていきます。ユダヤ人や在日朝鮮人、最近では新型コロナウイルスのワクチンが典型例です。「大金持ちのユダヤ人が我々の富を奪っている」、あるいは「不潔なユダヤ人が街の治安を悪化させている」。両極端の、ユダヤ人の本質とは無関係のデマで、すべてのネガティブな原因が「ユダヤ人」という記号に投影され、ホロコーストは起きました。 ここで重要なのは、当時のドイツがさまざまな意味でうまくいっていない理由