それは、安倍元首相の掲げる円安誘導政策によって、輸入品の価格が上がったからだ。このようなインフレは、日本の消費者から外国の生産者に所得を移すだけであり、日本の多国籍大企業の利益を上げることになる。 「3本目の矢」が欲しかった アベノミクスは、安倍元首相が公約に掲げた経済構造改革、すなわちいわゆる「アベノミクスの3本の矢」のうち「3本目」を真に追求していれば、日本を救うことができたはずである。しかし、そのためには権力を持つ者の既得権に踏み込む必要があり、安倍元首相は前例のないほど国会を支配していたにもかかわらず、構造改革の追求に政治資本を使わないという選択をしたのである。 それは、デフレさえ克服すれば痛みを伴うことなく成長できる、という自らの主張を信じたからかもしれない。一例を挙げれば、巨大な農業協同組合中央会(JA全中)が独占禁止法の適用を受けないため、消費者は高い食品価格を支払わさている