池上:政治に不案内な若手記者の場合、日々の政治家の会見を必死で追いかけるのが精一杯。政策を勉強する暇がないから、政策についての体系的な報道は現場からはなかなかできません。 そうなると、取材の中心は、どの政治家がどの派閥とくっついた、夜誰に会ったといった政局報道に偏ってしまいます。政治報道よりも政局報道ばかりが目立つ裏には、政治記者の絶対的な経験不足の問題があると考えれば納得がいきます。 御厨:政治記者の経験不足は、日本のマスコミの構造的な問題だと考えた方がよさそうです。 池上:政治記者の経験不足で思い出しました。菅直人前首相が財務相時代、参議院予算委員会で自民党の議員に質問されたときのことです。子ども手当の支給による「乗数効果」についての質問だったのですが、菅さんがうっかり「消費性向」と間違えて回答してしまった。事務方が出てきて、子ども手当の支給による乗数効果について改めて回答し直しました