Iさんが「お願い」するのは契約のことではありません。相手が社長の場合は、「社長、私は銀座の値札のない鮨屋に行ったことがないのです。故郷の母が一度はそういう店に行ってみたい、というので今度の誕生日に連れて行ってあげたいのですが、一見さんは非常に入りにくい雰囲気というのは察しがつきますので、一度でいいのでご一緒していただけないでしょうか?」と得意のお願い。 頼まれた社長は自分のメンツもありますので、心の中でこうつぶやきます。「そうか、俺は銀座の鮨屋で食べているように見えるのだな、仕方ないなあ、断ったら格好つかないしな」 こうして、相手のプライドをくすぐりつつ、うまくお願いを聞き入れてもらいます。ここからが“ずるゆるマスター”のIさんの面目躍如です。 「社長、先日はありがとうございました。おかげさまで、無事、母を鮨屋に連れていくことができました、社長のような注文はできませんでしたが。これは先日の