「アイロニカルな没入」の増殖 陰謀論的な流言・デマがいくつも現れては、現実を動かすような影響力を持つようになってきています。「悪魔崇拝者によるディープステイト(闇の政府)が世界を裏で支配している」と唱える「Qアノン」は、いまやアメリカだけでなく、ドイツやブラジル、日本でも勢力を拡大させ、社会問題化しています。 私がこの種の陰謀論に最初に関心を持ったのは、1990年代半ば、オウム事件のときでした。オウム真理教が「影の世界政府」との戦争を宣言して、地下鉄サリン事件など凄惨な事件をいくつも起こしたのは、ご存じのとおりです。 陰謀論や流言のほとんどはトンデモ話です。普通に考えれば決してあり得ない荒唐無稽な話なので、「そんな判断もつかない無知な人がいるのか」と思われるのが常でした。知識が足りなくてハマっている人になら、ファクトを伝え、偽知識を論理的に正せば納得してもらえます。でもオウム事件は違ってい