これを見ていると、ケインズとミクロ経済学者の論争を思い出します。ミクロ経済学者が「市場に任せれば、本来的には調整される」と言うのに対し、ケインズは「長期的にわれわれは皆死ぬ」と言ったんですよ。一言で「長期的」といっても、どれだけ長期的なのかはわからない。 この非常に魅力的かつ明らかに未熟な技術が、短期的に社会にもたらすコストとリスクを、私たちは背負う覚悟があるのか。この点について考えなければならない。これは“民主主義への挑戦”でもあります。 ――「民主主義への挑戦」によって、何が起こりうるのでしょうか。 新井 紀子(あらい・のりこ)/国立情報学研究所 社会共有知研究センター センター長・教授。一般社団法人教育のための科学研究所代表理事・所長。一橋大学法学部、米イリノイ大学数学科を卒業。イリノイ大学5年一貫制大学院を経て東京工業大学で理学博士号取得。『AI vs.教科書が読めない子どもたち』